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 ( Type Is Beautiful )
活字書体としての調和体
書道用語としての「調和体」とは漢字とかなを調和よく書いた書をいいます。書道は基本的に、「漢字」「かな(和字)」「調和体」というジャンルで構成されています。それぞれの会派によって呼び名が異なり、 現在では 「漢字かな交じり書」 がその総称として使われています。
 調和体という名称は、 尾上柴舟おのえさいしゅう(1876― 1957) によってはじめて唱えられました。これは 「粘葉本和漢朗詠集でっちょうぼんわかんろうえいしゅう」 の書を基としたものでした。すなわち、和漢朗詠集の漢詩の書体と和歌の書体を組みあわせて、別の漢字かな交じり文を書くという試みでした。
 第二次世界大戦後、 調和体(漢字かな交じり書)への関心が高まり、 それぞれの立場において制作されることになりました。 調和体は、「新和様」とか「近代詩文」などとも呼ばれていますが、いずれにせよ現代の国語表記によって書かれた文面をそのまま書作品として書かれたものです。
●現代日本語の特質と活字書体

 現代の日本語では、漢字と和字というまったく性格の異なる文字体系を混在させて文章を組みあげている。いまは漢字書体だけでは現代日本語は組めないし、和字書体だけではわかりにくい表記になる。そればかりか、文字列のなかにも欧字が日常的に入り込んでいる。
 現代日本語の表記が漢文訓読文から発展したと考えれば、日本語書体は漢字が中心である。漢語や語幹を漢字で書くという文章の構造からいっても、漢字を軸として和字や欧字を交えるとするのが本筋のようでもある。近代金属活字が伝来した明治時代以降においては、中国でデザインされた漢字書体に調和するように、日本で和字書体を合わせてきた歴史がある。また字数からいえば全体の大半を占めているのが漢字である。数の多さは書体設計の制作時間に比例する。
 いっぽうでは、日本語の表記が日本古来の和語(やまとことば)に外来語である漢語をまじえたものだということもできる。すなわち和語を和字で書き、漢語を漢字で書くというのが基本とする考え方である。和字はもともと漢字からつくられたのであるが、けっして漢字に従属するものではない。現代の日本語では、漢字と和字というまったく性格の異なる文字体系を混在させて文章を組みあげている。和字書体だけではわかりにくい表記になるし、漢字書体だけでも現代日本語は組めないのである。
 それぞれの歴史をきざんできた、漢字・和字・欧字の書体の調和を考えることが大切なのである。理に適った組み合わせは、新しい創造なのではないだろうか。それぞれの歴史をきざんできた、漢字・和字・欧字の調和を考えることが大切なのである。
 従来は、中国で設計された漢字書体に調和するように、日本で和字書体を合わせてきたといわれてきた。もしそうだとすれば、明朝体と組み合わせている和字書体は、現状のような形象にはなっていないという気がしている。中国で設計された漢字書体にたいし、和字書体は日本で歴史をきざんできた。和字はもともと漢字からつくられたが、平安時代から千二百年以上にわたって日本で使われてきた。けっして漢字に従属するものではない。
 和欧混植ということは日常的におこなわれている。同じように和漢混植が通常の方法として定着すれば、日本語の組版もイメージがひろがっていく。すなわち「和漢欧混植」ということである。多くのデザイナーがあたりまえのように和漢欧混植をおこなうようになったときに、はじめてデザイナーはデジタル・タイプを使いこなせるようになったといえるだろう。
 和漢欧混植こそが日本語のタイポグラフィの基本であり、さらに深くデジタル・タイプの多様性を追求することが可能になるのである。

●和字書体、漢字書体、欧字書体の調和

 以前から、和字を変えれば組版のイメージが広がるという考え方がある。これは文字数の少ない和字書体によって、日本語書体の多様化をはかるというものであった。 圧倒的な文字数の漢字に対して、少数派の和字が実際の使用量では多くなっていることは確かである。一般的な文章においては約七割近くを占めているそうだ。したがって組版のイメージは、使用量によって支配される。

  石井細明朝体・標準和字書体
  石井細明朝体・準用和字書体(大きさの変化)
  石井細明朝体・準用和字書体(書体の変化) 

 逆にいうと、ひとつの和字書体を複数の漢字書体と組み合わせることが可能だということにもなる。明朝体と併用されている和字書体は、ただ組み合わせているにすぎない。ひとつの和字書体を複数の漢字書体と組み合わせることが可能なのである。明治時代の印刷物をみても、明朝体と組み合わされることもあれば、また清朝体と組み合わされることもあったのだ。

  新街活版製造所
  築地活版製造所
  青山進行堂活版製造所

 漢字は中国から輸入したものであり、書体設計もまた中国から導入されたものである。現状において漢字書体はおもに明朝体だけに縛られているが、これは残念なことだ。和漢混植のためには、漢字書体の選択肢がもっとふえることが必要である。中国の真書体系統の刊本字様は明朝体だけではなく、宋朝体・元朝体・明朝体・清朝体と変遷してきたのである。
 中国で設計された漢字書体にたいし、和字書体は日本で歴史をきざんできたのである。それぞれの歴史をきざんできた、漢字・和字・欧字の書体の調和を考えることが大切なのである。理に適った組み合わせは、新しい創造なのではないだろうか。

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 日本語の文字列のなかには欧字が日常的にはいり込んでいる。欧字書体は欧米に数多くの優れた書体が継承されているので、和欧混植ということがおこなわれてきた。同じように和漢混植が通常の方法として定着すれば、日本語の組版もイメージがひろがっていくであろう。
 日本語書体においては和欧混植ということが日常的に行われてきた。ただ漢字書体・和字書体との組み合わせを考えたとき、その構造の違いから多くの問題が生じる。その条件を満たすために、いろいろな工夫が繰り返されてきた。  金属活字、写真植字では、和文組版においては既成の欧字書体から選んで組み合わせていた。デジタル・タイプでは漢字書体・和字書体とともに欧字書体も従属されてはいるが、基本的にはむしろ既成の欧字書体から選ぶことが通常のルールになっている。
 欧字書体を選ぶ際の基本ルールとして、一般的にいわれているのは次の三点である。
   ひらがなのウエイトやイメージにあったものを選ぶ
   エックスハイトの高い書体を選ぶ
   小文字のaからzまでの長さ(a-z length)が比較的長い書体を選ぶ
 ところが漢字・和字は中心で揃えるのに対し、欧字書体はベースラインで揃える。既成の欧字書体だと、本格的な欧文組ならいいが、和欧文混植になるとディセンダーの分だけ欧字書体が上がって見えるのである。
 そこで、キャップハイトが天地中心になるように重心を下にした欧字書体をデザインした。写研では、既成の欧字書体をE欧文、キャップハイトが天地中心になるように重心を下にした欧字書体をR欧文といっている。R欧文では、下に張り出してしまうディセンダー・レターのデザインを変更してある。
 明朝体やゴシック体に従属させる場合にはこの方法で良かったのだが、ディスプレイ用などさまざまな書体が登場するようになって、既成の欧字書体では対応できなくなる。そこで、漢字・和字に合わせた欧字書体を制作することが主流になってきた。
 漢字・和字に合わせた欧字書体では、ディセンダー・レターの問題がある。縦組の場合のことも考えなければならない。とりわけ字面の大きなディスプレイ書体の場合には、欧字書体も字面を大きくしなければならず、ディセンダーが極端に短くなってしまうなど多くの規制の中で制作しなければならない。

●和字書体、漢字書体、欧字書体の選択

 日本語書体として成立するためには和字書体、漢字書体、欧字書体を選択する必要がある。あらかじめ組み合わせた日本語書体を製作しておいたほうが利便性は高いといえる。たとえばつぎのような組み合わせで日本語書体ができる。
 和字書体A+漢字書体A+欧字書体A
 和字書体Aを中心に考えれば、組み合わせる漢字書体はいくつも考えられる。それによって多数の日本語書体ができることになる。
   和字書体A+漢字書体A
   和字書体A+漢字書体B
   和字書体A+漢字書体C
 また漢字書体Aを中心として考えれば、これまたいくつもの組み合わせが可能となる。
   和字書体A+漢字書体A
   和字書体B+漢字書体A
   和字書体C+漢字書体A
 このような組合せの中から汎用性が高いとおもわれる和文書体を製作するというのが理想的なのではないだろうか。

 これまでしるしたように、和字書体も、さらには漢字書体も、欧字書体に優るとも劣らない歴史を日本と中国において刻んできている。その種類も遜色のないものであることがわかってきた。
 これらの書体がファミリーも含めて実用化されることにより、欧字書体にも負けない系統化された書体群が成立する。そこで和字書体は漢字書体に従属するという考えから脱して、それぞれが独立した書体名称をもつことを提案したい。
 また漢字書体も、わが国では近代明朝体を中心に模倣されてきたために、中国における刊本字様として欧字書体に匹敵する多様な書体群をもっているが、これらもまた実用化されてはいない。多くの書体が制作されれば、和字書体との組み合わせも豊富になるであろう。
 いまこそ21世紀のタイポグラフィを実践できるステージができあがりつつあるといえる。

混植機能のあるアプリケーション

より効率よく活用するには、「合成フォント」「フォントセット」などの機能のあるアプリケーションが必要となります。詳細は各アプリケーションのマニュアルを確認してください。

Adobe InDesign CS2,CS,2.0
漢字・かな・全角約物・全角記号・半角欧文・半角数字を指定可能です。また、サイズ・ベースライン・垂直比率・水平比率など、きめ細かな調整が可能です。

Adobe Illustrator CS2,CS
漢字・かな・全角約物・全角記号・半角欧文・半角数字を指定可能です。また、サイズ・ベースライン・垂直比率・水平比率など、きめ細かな調整が可能です。なお、Adobe Illustrator 10.0は合成フォント機能は装備されていません。Adobe Illustrator 9.0,8.0,7.0,5.5は合成フォント機能は装備されていませんが、Mac版のみ、 プラグインソフト「TypeMixing」により、合成フォント機能が利用可能です。

Adobe PageMaker7.0,6.5
「ベースフォント」に対して、欧文・ひらがな・カタカナ・記号・特殊文字を合成可能なほか、文字コード範囲を指定した「カスタム」合成が可能です。また、サイズ・ベースラインの調整が可能です。なお、 Windows版では合成フォント使用時に縦組でズレが起きる現象が確認されています。

Quark XPress 6.5
漢字・かな・英字・数字・特殊文字をそれぞれ指定可能です。また、相対サイズ・ベースラインシフト・文字の変形が調整可能です。Quark XPress 6.1,4.1,4.0,3.3は、漢字・かな・英字・数字・特殊文字をそれぞれ指定可能です。また、相対サイズ・ベースラインシフト・文字の変形が調整可能です(Ver4.0以降)。 ただし、縦組時にわずかなズレが起きる場合があります。

和字書体に漢字書体と欧字書体を従属させた日本語書体

初心者は、あらかじめ和字書体に漢字書体と欧字書体を従属させた日本語書体を使うと便利です。