●ふでづかい
「たおやめ」や「ほくと」と比べると、「たいら」がもっとも緩急があるようです。「まわし」は、「あ」「ら」にみられるように、勢いよく払っているように感じられます。
●まとめかた
「たおやめ」や「ほくと」は「あ」「の」「め」などが正円に内接するようですが、この書体では寝かせた卵形に内接するようです。ただすべてが扁平かというとそうでもなくて、それぞれの組み立ては「字型(円形・菱形・逆三角形・正方形・縦長方形・横長方形)」に沿っており、伸びやかさを保っています。
●ならびかた
ベタ組みを基本に設計しています。
内外印刷株式会社
『書物の世界』は、京都の内外印刷株式会社で印刷・製本されている。
原資料は『書物の世界』(寿岳文章著、朝日新聞社、1949年)の本文で使用されている12pt活字です。欧文タイポグラフィの基本原理を日本文縦組みへの応用を著した書物です。鮮明な活字組み版と、堅牢な造本によって、それを具体化させたもので、記念碑的な書物だといわれています。
寿岳文章(1900-1992)は英文学者で、書誌学者としても知られています。兵庫県出身で、京都帝大を卒業しました。妻は翻訳家・随筆家のしづ、長女は国語学者の寿岳章子です。寿岳文章は関西学院大、甲南大などの教授を歴任し、英詩人W・ブレイクを研究し昭和四年「ヰリヤム・ブレイク書誌」をあらわし、ダンテの「神曲」を完訳しました。
一方で、書誌学、和紙研究会の先駆者として知られ、1937年(昭和12)に言語学者の新村出(1876-1967)らと和紙研究会を結成しました。自らも私版『向日庵本』を刊行し、数々の美しい書物を作り続けました。
■組み見本
カタカナの「ヰ」「ヱ」「ヲ」はみつかりませんでした。
ひらがなと同じく、拗音・促音などにもちいる「小さなカタカナ」は、大きさ・太さを揃える方向で調節していきました。
漢字書体は、
左:宝玉
中:聚珍
右:武英
準備中
本文のすべてが対象となる四号活字ですので、ほとんどのキャラクターを抽出することができました。ただし「ゐ」「ゑ」はみつかりませんでした。
戦後まもなくということもあって印刷用紙の紙質はきわめて悪いものでした。それでも四号活字ということで、抽出された文字は比較的鮮明でした。さほど苦心することもなく、できるだけ忠実に再現するようにつとめました。
ただし、拗音・促音などにもちいる「小さなひらがな」は、大きさ・太さを揃える方向で調節していきました。
また、極端に細くなる連綿線は、さらに小さく使用しても破綻のないように、やや強くしています。