ふでづかい
「あ」「め」などのまわしは、やや頂点があがっており、左下にひきおろしています。「ち」「ら」などうねりをもった筆遣いもなく、すなおなかえしになっています。「き」「さ」にもふくらみはありません。同様に「は」「ほ」などのたておくりも直線的になっています。
 カタカナの「ソ」「ツ」「フ」などのふりおろし、「ン」「シ」「レ」などのふりあげなどは、浅いカーブをえがいています。

まとめかた
 まきこみ、うねりによるふくらみがないぶん、ふところがせまく締まった感じにみえます。字型の差もすこし大きいように思えます全体的に動的なイメージがあり、ひのもと・いぶき体を代表する書体だと考えています。

ならびかた
『少年工芸文庫第八編 活版の巻』は四分アキのようですが、「はなぶさ」はベタ組みを基本に設計しました。

秀英舎
秀英舎があったのは、営団地下鉄銀座駅で下りてすぐの、現在はみずほ銀行数寄屋橋支店があるあたりである。またみずほ銀行数寄屋橋支店の向かいの対鶴館ビルのあるあたりに、秀英舎の活字を鋳造する子会社の製文堂があった。
 製文堂は最初は現在の泰明小学校の近くにあったそうである。明治15年(1882年)東京築地活版製造所から小倉吉蔵を招いて製文堂を創設して、活字の製造販売に進出したのがはじまりである。
 昭和10年(1935年)、秀英舎は日清印刷と合併して大日本印刷となった。

原資料は『少年工芸文庫第八編 活版の巻』(石井研堂著、博文館、1902年)です。
  著者の石井研堂(民司、1865−1943)は、民衆の立場から明治以来の日本の近代化を探求・記録した博物学者です。『明治事物起原 全八冊』(ちくま学芸文庫、1997年)、『江戸漂流記総集 全六冊』(日本評論社、1993年)が現在でも入手できます。
『少年工芸文庫』は全12冊発行されています。「活版の巻」のほかには、鉄道の巻、水道の巻、瓦斯の巻、写真の巻、電話の巻、硝子の巻、紡績の巻、汽船の巻、製紙の巻、銅山の巻、電燈の巻があります。
 秀英舎で印刷されています。本文はいわゆる秀英舎四号および五号です。縦176mm、横152mmで、本文は136ページの書物です。


■組み見本

 カタカナも、製文堂『活字類見本』(明治27年、印刷図書館所蔵)などの秀英舎四号明朝から清音の文字すべてのキャラクターが抽出できました。現代の組み版を考慮にいれ、字面を原資料より少し大きく設定しました。

漢字書体は、
 左:蛍雪
 中:金陵
 右:龍爪

『さようなら窓』
(東直子著、マガジンハウス、2008年)

『字音假字用格』は漢字カタカナ交じり文なので、カタカナはだいたい揃えることができました。「ネ」「ヰ」「マ」がありませんでしたので、書風をつかんだ上で新たに書き起こしました。
 そのほかの文字で大きく形姿を整えたのはありません。全体的に統一感を醸しだすように筆づかいや形姿を整えていきました。
『字音假字用格』は漢字カタカナ交じり文なので、カタカナはだいたい揃えることができました。「ネ」「ヰ」「マ」がありませんでしたので、書風をつかんだ上で新たに書き起こしました。
 そのほかの文字で大きく形姿を整えたのはありません。全体的に統一感を醸しだすように筆づかいや形姿を整えていきました。

 修整の方向を見いだすためには組み見本と比較検討することが必要ですが、活字書体見本帳で全キャラクターが揃っているほうが活字書体の復刻には好都合です。
 実際には、製文堂『活字類見本』(明治27年、印刷図書館所蔵)などの秀英舎四号明朝の和字を抜き出して参考にしました。
 見本帳掲載のキャラクターのうち「そ」「お」「え」の三文字は『少年工芸文庫第八編 活版の巻』によりました。
 過去の書体をベースにしながら、現代のさまざまな要求に応えられることが必要です。秀英舎四号和字にはいささか古いと感じられる筆法があります。現代の文章を組むためには違和感があるので、書道でいうところの意臨という考えで検討していきました。

『おふくろの夜回り』
(三浦哲郎著、文芸春秋、2010年)

『ことり』
(小川洋子著、朝日新聞出版、2012年)

 こちらに組み見本があります。

■ファミリー展開